大分県における精神障害者就労の現状と課題
 日本における精神障害者の就労は立ち後れているが、なかでも大分県は特に遅れていると言わざるを得ない。その理由の一つとして、就労のための取り組みのバランスが悪く、連携ができあがっていないことがあげられる。
 就労を推進するためには、当事者・家族、福祉、医療、保健、行政、企業などの関係者それぞれの努力とともに、連携して情報を共有し、お互いに補い合いながらサポートをしていくことが欠かせない。県内でも様々な取り組みがなされ、成果を上げてきているにもかかわらず、そのノウハウが共有されていない現実がある。
 厚生労働省は「入院者のうち7万2千人を地域へ」という方針を打ち出したが、退院後に地域でどのように暮らすのか見通しはない。地域に定着して安心して暮らすためには、就労が欠かせない。そして就労がゴールではなく、職場でのフォローが必要になるし、生活のフォローも欠かせない。病院と施設、ソーシャルワーカーの連携、行政の中でも福祉・保健と労働行政の連携、また企業の就労への取り組みなど課題は多い。
 このネットワークの結成が、そのすべての関係者が参加して行われたことの意義は非常に大きい。ネットワークとしてはまず、調査に取り組み現状を把握しながら、大分県における精神障害者の就労実態の全体像と、就労推進システムの現状、社会資源などの情報を共有していくことが最初の課題になる。そして、その資源(ソース)をどのように有効に就労に結びつけていくのかを探っていくことになる。それが“大分モデル”の開発につながる。
 大分でもすでに就労を実現している企業は存在し、また機会があれば採用してみたいという企業もあることは昨年の「大分セミナー」における第1次調査(10ページ参照)で明らかになっていることから見ても、『就労推進』は決して不可能な目標ではない。
 様々な立場の人たちが、立場を超えて、意欲を持って参加したこのネットワークには大きな可能性があることを確認し、一緒に取り組んでいきたい。

別府大学文学部人間関係学科講師 三城大介先生