第1回セミナーは12月4日、大分文化会館第1小ホールで、大分障害者職業センター主催の「大分地域職業リハビリテーション推進フォーラム」を後援する形で実施されました。藤波代表が来賓としてあいさつを行い、九州ルーテル学院大学の倉知延章教授の「精神障害者の就業と地域生活支援(ACT)の取り組み」をテーマにした講演と、近藤副代表がコーディネーターになってのシンポジウムが行われ、有意義な学習が行われました。以下報告します。
あいさつ
主催者あいさつ 深井法雄・大分障害者職業センター所長 障害者の雇用状況は、ハローワークでは求職に訪れた人の39%が就労しており向上している。しかし全体を見ると、身体障害者の就業率は11.4%、知的障害者は24.8%、とくに精神障害者の場合は1%位と極端に遅れており、取り組みの強化が必要だ。
来賓あいさつ 藤波志郎・大分精神障害者就労推進ネットワーク代表 家族の願いは地域で安心して生活できること。そのためには就労が欠かせない。現状は個々に取り組み、障害者職業センター等に依頼しているが、より多くの情報が必要。ネットワークによる情報交換、就労ステップの具体化、一般就労−福祉就労−地域生活の一体的支援をめざしていきたい。
精神障害者の就業と地域生活支援(ACT)の取り組み - 九州ルーテル学院大学 倉知延章教授
ACT(包括的地域生活支援)は、諸外国で重度の精神障害者が地域で暮らすための支援として成果を上げている。日本ではより軽度の障害者でも入院しており、取り組みが遅れている。愛媛県宇和島市でACTの方法を応用して精神障害者の雇用を進める取り組みを行ってきた。
個々に応じた支援で成果、地域での生活・就業を実現するためには、実際に生活する場で個々に応じた支援が必要。ACTの考え方を取り入れて、徹底した個別支援、生活の場を活用した移動型訪問サービス、様々な分野の協力によるチームアプローチ(ソーシャルワーカー・看護師・精神保健福祉士・職業カウンセラー・医師)をめざした。
支援内容は、治療、リハビリテーション、日常生活支援、就労支援、退院促進などで、自己決定を保障し対等な関係をつくることにより、本人に地域で暮らす力を付けることをめざした。本人の希望を受けとめてやってみると言うことで信頼が生まれ、またやってみることで本人も現実的になってくる。日本では、障害が長期入院によってつくられている部分があるという問題があるが、支援によってQOL(生活の質)がまったく変わり、生き生きしてくる。2004年から2005年3月までに15名が就職し、1名が復職した。職場実習実施者は21名に上り、実習受け入れ企業は17社に及ぶ。
職場開拓はチームのスタッフが自分たちで動く。就労したらフォローアップが重要で、職場訪問と自宅訪問を行う。これをしないとダメになる。7名のチームで自宅や企業、他機関を訪問した回数は1536回、訪問した事業所は121社になった。
多くの精神障害者は働ける。
この経験で学んだことは、多くの精神障害者は働けるということ、支援者の評価・予測は当たらない、ニーズに基づく支援と利用者を信頼することが成功の可能性を広げるなどだった。広域支援は無理で、市町村単位の取り組みが効果的だ。また来るのを待つのではなく、これからは訪問型の支援が必要だ。地域に支援チームを作り、積極的に取り組んでいくことで成果を上げることができる。宇和島以外でも取り組みは広がっている。(要旨・文責編集部)